西村 高宏 准教授
Nishimura Takahiro

准教授 西村 高宏 Nishimura Takahiro

専攻:哲学/倫理学/臨床哲学
Researchmap:https://researchmap.jp/0328

1969年生。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)(大阪大学、2004年)。日本学術振興会特別研究員PD、大阪大学大学院医学系研究科特任助教、東北文化学園大学准教授、同教授(大学院兼任)、2015年、福井大学医学部国際社会医学講座准教授を経て、2024年4月より現職。

研究紹介

〈対話〉という営みをとおして、哲学的な知の社会接続の可能性を問い直すことが現在の主な研究テーマ。哲学以外の研究者や様々な職業従事者、アーティストなどと連携し、医療や教育、災害、アートなどのうちに潜む哲学的な諸問題や、その際に必要とされる哲学臨床の作法などについて、当事者、現場の方々の言葉遣いや思考をもとに丁寧に読み解いていく活動を行なう。最近は、災禍、戦禍に関わりなく、わざわいのただなかでさまざまな〈割きれなさ〉のなかを生きることを余儀なくされた人びとの苦しみ、ことば、思考の具合に関する研究・実践を行なっています。また、イタリアの哲学プラクティショナーらと連携し、医療やケアの現場、とくに精神保健医療福祉領域における〈哲学対話実践〉の可能性についても考察しています。

メッセージ

大学院での学びとは、何よりも専門的知識を蓄え、ものごとを把握するために欠かせない視点や方法を逞しくしていく作業のことと捉えがちです。しかし、むしろそれはこれまで知らず識らずのうちに築き上げてきた自身の思考の癖や〈こだわり〉をひとつひとつ丁寧にほどいていく作業のように思います。〈こだわり〉がいつしか物事の理解を阻害するたちの悪い〈こわばり〉になることも十分ありうることです。肩(型)の力を抜き、自分をつねに開け放した状態にしておける研究者・実践者になって下さい。

書籍紹介

せんだいメディアテーク編『つくる〈公共〉50のコンセプト』
(2023年、岩波書店)

美術や映像文化の活動拠点/市民の交流の場として著名なせんだいメディアテーク。震災経験を経て、てつがくカフェなどの対話・交流の試み、人々の居場所づくり、地域活性化、表現活動・ワークショップなど、様々なかたちでこの「文化の結節点」に関わる50人が、あらためて〈公共〉のあり方を独自の切り口で問いなおす。

担当:「他者と対話する」

西村高宏『震災に臨む 被災地での〈哲学対話〉の記録』
(2023年、大阪大学出版会)

哲学的実践は、被災への処方箋になりうるか――

東日本大震災以降、せんだいメディアテークを中心に筆者が40回以上にわたって行ってきた被災者との哲学対話実践の活動を紹介し、被災に臨む哲学の可能性を批判的に検証する。

そもそも、震災を「語りなおす」とはどういうことか。ふさわしい「言葉」とは何か。被災からの時間経過とともに変化する被災者・支援者・当事者といったアイデンティティの葛藤、「負い目」、「役に立たない」、「支援とは何か」、「当事者の痛みを理解することは可能か」、「ふるさととは何か」、「被災者でもある医療専門職者たちの公私をめぐる戸惑い」、「写真から〈ともに考える〉」といった参加者たちの様々な言葉から、震災という〈出来事〉をほぐす。震災に臨む哲学のありかたを探る試み。

榊原哲也・西村ユミ編『医療とケアの現象学 当事者の経験に迫る質的研究アプローチ』
(2023年、ナカニシヤ出版)

医療やケアの実践の現場では何が起こっているのか?

医療実践に関わる医師や看護師や対人援助職,さらに医療を受ける患者や家族にとって,医療やケアに関わる実践はどのように経験されているのか。現象学を用いた質的研究アプローチを通して、それぞれの当事者の視点から克明に描き出す。

看護を中心に現在行われている現象学的な質的研究では,「事象そのものへ+事象そのもののほうから」というこの〔現象学の〕精神が生かされている。すなわち,医療者が専門職となるために身につけ,専門職としての活動のなかで習慣化している自然科学的ないし医学的なものの見方を一つひとつ棚上げし――あるいは何らかの出来事をきっかけにそうした自身の先入見に気づかされ――,そのことによってみえてくる当事者の経験の時間的・構造的な成り立ちをできる限りありのままに記述していこうとする。そうしたなかで,その事象の記述にふさわしい方法や手続きも,事象そのものに即して選び取られていくのである。(「序章」より)

担当:「第7章 あいまいな専門職の私 看護の〈専門性〉をめぐる哲学対話」

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