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関西倫理学会2022年度大会

ワークショップ:生き延びることの倫理 ーー非規範的なジェンダー・セクシュアリティとボールルーム・カルチャー
日時:2022年11月11日(金)19:00~21:00
場所:大阪大学 豊中キャンパス 文法経講義棟4階・文41教室

ある規範の強制下におかれる状況において、規範への抵抗やそれからの解放をめざすひとたちがいる一方で、規範にそった生き方をあえて望み選択するひとたちもいる。リスクをかえりみず、みずから声をあげ、規範の強制を批判し、あらたな生の可能性をみいだそうとする前者にとって、後者は解放を妨げ、それを無化するものと映ることがある。しかし、はたして両者は矛盾し、対立するものだろうか。対立としてとらえることが覆い隠してしまう現実があるのではないだろうか。

たとえば、ジェンダーやセクシュアリティ、あるいはその他の社会的属性・特性において規範の「外」を生きるひとたちが、規範の「内」にある者を模倣し、いまのじぶんとは異なる姿を他者のうちに夢見ることは、抑圧の現実から逃避し、背後にある社会構造上の不均衡や問題点を隠蔽し、それらを強化することになるのだろうか。抑圧的な社会構造の下におかれ、その状況を生きなければならないひとたちは、じぶんたちの一時凌ぎながらも安らうことのできる場所、「ホーム」をもとめることなしに、社会変革のためにたたかわなければならないのだろうか。たしかに、解放をめざすひとつひとつの動きが、より望ましい社会への変革を導いてきた事実を無視することはできない。しかし、安住か変革か、服従か抵抗か、同化か異化か、という二者択一のほかに、周辺化されるひとたちの生きる道はないのだろうか。なぜ、そのような選択が「持たぬ者」に問われなければならないのだろうか。

アメリカ合衆国ニューヨークにおけるボールルーム・カルチャー(ballroom culture)は、映画 Paris Is Burning(邦題『パリ、夜は眠らない』ジェニー・リヴィングストン監督作品、1990年)によってひろく知られるようになったことをきっかけに、「裕福」な「異性愛者」の「白人」を演じるアフリカ系、ラテン系の性的指向・性自認が「非典型」とされるひとたちのパフォーマンスをめぐって、フェミニズムやクィア理論の研究者たちが、性的指向と性自認、ジェンダー表現に関する少なくない誤解をはらみながらも、さまざまに論じてきた。はたしてそれらは、人種差別、性差別、同性愛嫌悪、トランス嫌悪、貧困、感染症が交差するところに生きる「持たぬ者」の姿、そのちからを十分にとらえられていただろうか。魚住洋一の論考「There’s No Place Like Home──ドラァグ・クイーンと「ホーム」の政治」にて提示された論点を出発点にしつつ、あらためてインターセクショナリティ/交差性の視点から、抵抗と解放の実践と対立することのない、「持たぬ者」が生き延びることの倫理について、参加者とともにかんがえたい。

実施責任者・司会小西 真理子(大阪大学)
課題者魚住 洋一(京都市立芸術大学名誉教授)
高橋 綾(大阪大学)
ほんま なほ(大阪大学)

参加を希望される方は直接会場へお越しください。
無料でご参加いただけます。

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