第15回 臨床哲学フォーラム「社会の臨床、そのメチエとエチュード」

テーマ「シリーズ第1回 臨床を書く、そのくるしみ」

日時:
2025年1月11日(土)14:00〜17:00
場所:
大阪大学豊中キャンパス全学教育総合棟1 COデザインスタジオ(341)

 近年、心理学、社会学、看護研究、その他のひとにかかわる領域において、質的研究が注目され、数おおくの研究が発表されています。本来、質的調査とは量的な調査と組み合わせておこなわれ、単独で成立するのではなく、より大きな研究の一部に位置づけられるものです。他方で、ひとびとの生活のなかの「声」に着目し、その「声」をききとり、膨大な文字のデータとして集積する人文学のあたらしい潮流もみられます。いずれにしても、これらの研究は、ひとびとの「生活」や「声」を「対象」にして、それを大きな構造や枠組みのもとにに理解しようとするする試みだといえるでしょう。

 そのようななかで、臨床哲学が手探りでもとめてきたのは、医療の場にかぎらない〈臨床〉、つまり、〈ひとびとが出会われる現場〉において、旧来の人文学の制度にとらわれず、また、実証主義的、エヴィデンス中心的なアプローチでもない、ひとびとへの〈生身の関わり〉でした。こうした臨床哲学の試みは、対話という実践面においては、関連分野の実践者とともに、試行錯誤をくりかえしながら、さまざまな社会の現場にひろがりつつあります。しかしながら、その成り立ちにおいて「非方法」をモットーとするがゆえに、研究へのアプローチという面については、まだまだ先を見通せていない、といわざるをえません。

 シリーズ「社会の臨床、そのメチエとエチュード」では、社会の臨床における実践の〈メチエ〉、つまり、〈からだをはたらかせて、ことをなす〉という営みに、しっかりと根をおろしながら、その〈メチエ〉を他者につたえ、知恵としてわかちあう、その先にある研究のすがたをともに探っていきます。臨床哲学は、そのはじまりから、学問はどうあるべきかを問う、「学問論」でもありました。既存の方法主義にのっとるのではなく、あくまで「学問論」を問いながら、しかし、ものごとを俯瞰する抽象論におわることなく、手や足、そのほかのからだや感覚を研ぎすますような、研究をおこなうための試論、練習、〈エチュード〉をみなさんとともに、奏でていきたいとおもいます。

第1回 臨床を書く、そのくるしみ

第1回は、さまざまな臨床の場面に身をおいてきた教員と大学院生4名が、臨床を書くことのむずかしさ、その苦しみについて、語ります。第2回以降は、他分野の研究者、実践者をゲストに招きながら、大学院教育の制度にかかわる問題についても考察していく予定です。

日時:2025年1月11日(土)14時〜17時
場所:大阪大学豊中キャンパス全学教育総合棟1 COデザインスタジオ(341)
https://cscd.osaka-u.ac.jp/access
主催:大阪大学大学院人文学研究科臨床哲学
共催:大阪大学COデザインセンター

プログラム

  • 趣旨説明「経験をかたり、書くことのむずかしさ」ほんま なほ(大阪大学COデザインセンター)
  • 「悲惨な経験を記録する(recordari)〜禍・災に臨む哲学〈臨床〉のメチエを考える」西村高宏(大阪大学大学院人文学研究科)
  • 「人文学における〈こえ〉の復権と〈真理〉論」ほんま なほ
  • 「インタビューもいやだし、自分を書くのもいや」齊藤如穂(大阪大学大学院人文学研究科博士後期課程)
  • 「言葉、声、文体を探す:精神医療をめぐる経験を記述するために」大野美子(大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程)

※発表第目は当日に変更される可能性があります。

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