水俣病公式確認から67年、チッソの責任を認めた水俣病一次訴訟の判決から50年、現在も患者さんたちは水俣病とともに生きつづけており、水俣病関連の訴訟も続いています。しかし、患者さんたちの高齢化は進み、日本の近現代史にその負の側面を刻む出来事としての水俣病は、記憶継承の転換期にさしかかっています。
一方で、水俣には、そのような歴史的な大きな出来事としての水俣病ではなく、その土地にくらす人々の生活に起こった出来事としての水俣病について、患者さんの語りを聞き取り、地域で語り継ごうとする水俣病センター相思社のような活動も存在します。また、今回のゲストのお一人、柏木敏治さんは、水俣病に限らず、戦前から続く水俣の人々の暮らしに寄り添い、表現した歌を作り、歌い続けておられます。
水俣病、そして水俣からは、患者・市⺠運動や訴訟活動だけでなく、映像、写真、文学、歌という表現活動が多く生み出されてきました。これはなぜかと考えたとき、水俣、そして水俣病患者さんは日本の近代化の負の側面を背負わされた「不幸な土地、不幸な人々」であるだけではなく、社会の負の側面をそれぞれの生活の中で生きのびることによって、独自の知恵と表現を生み出してきた土地、人々でもあるのではないか、ということが思い浮かびます。 今回の研究フォーラムでは、水俣病および水俣で生きる人々の語りを語り継ぎ、歌い継ぐ活動をされている、柏木敏治さん、相思社の小泉初恵さんをお招きし、水俣という地域の歴史、地域に暮らす人々の生活としての水俣病を語り継ぐ表現とはどのようなものであるのかを、その表現に触れながらみなさんとともに考えたいと思います。
※この企画は、来年度より実施予定の「大阪大学人文社会系オナー大学院プログラム」の科目開発の一環でおこなわれます。
プログラム
- 「水俣病を語り継ぐ」小泉初恵(水俣病センター相思社)
- 「マイノリティの〈こえ〉と表現」ほんま なほ(大阪大学COデザインセンター)
- 「詩の声、歌の声」渡邊英理(大阪大学人文学研究科)
- 唄と演奏 柏木敏治(水俣在住シンガーソングライター)
- 司会ときき手 高橋 綾(大阪大学人文学研究科人文学林)
主催: | 大阪大学COデザインセンター |
共催: | 大阪大学人文学研究科臨床哲学研究室 |
入場料: | 無料 |